先週末は福島県で、私が知ってる限り3か所でワイナリーに関するイベントがあったように思う。その一つに参加する機会があった。
ワインというのは、アルコールというより、ストーリー(物語)を飲むものだ、と思っているので、なるべく多くのワイナリーとコンタクトしてみたい、というのがあるのだが、福島の場合は加えて「復興」という二文字が入る。私は放射線汚染地区(と言わずに帰還困難地域と言うが)の復興については懐疑派で、避難者によその土地で暮らしていく手厚い支援策を行う方がいい、という考えなのだけど、今回はその現場の、帰還困難地域だった場所の当時者の人達から、ワインにかこつけていろんな話を聞くことが出来て、うーん・・・ということに(?)なった。
ワインはテロワール等の考え方から、その土地の食べ物に合わせるというのをどこも目指す(これもひょっとしたら壮大な妄想ではないか、と思うこともあるが、それは別のところで)ことが多いが、浜通りは「常磐もの」という魚のブランドがある
http://joban-mono.jp/about
(いわき市のサイト。GIを取得してるわけではないが、広義には福島県から茨城北部で取れる海産物を言う。)
ヒラメとかの白身の魚が特においしい、という。第一原発の南側には、富岡町に漁港があったが、この付近の沖合は漁業資源は回復し(誰も魚を取らないのが原因だが)とんでもなく大きい鯛、カレイが取れるようになっているという。(ちなみに誤解のないように書いておくが、放射線の影響で大きくなったとかでなく、大物の魚が取れる、ということである。念のため。)シャルドネやソービニヨン・ブラン、リースリングなどで合わせることが出来れば・・・・。
一方で今一番の問題は大量の汚染水をどうするか、ということである。検討されているのは、基準値内であることを確認の上、海に放出することである。立地場所の双葉町、大熊町・・・漁港のある富岡町の隣・・・の沖合への放出になるはずである。
前に書いたことがあるかも知れないが、佐賀の玄海原発では二次冷却水の排出口近辺は温水と冷水が混ざり、おいしい魚がよく釣れる。(私自身たべたことがある。)沸騰水型の第一原発と仕組みも異なり、加圧水型の二次冷却水は理屈上は放射能は含まれないが、それでも時々検出されることがある、という。まあ時々ちょっとくらいの放射線はいいじゃないの、とその昔は言っていたが、さすがに冗談でも福島で言うことは出来ない。
きちんとした数字を持っていないのでうろ覚えになるが、基準値以下の汚染水から影響うける放射線はせいぜい海外旅行に一回行く(=飛行機内での被爆)くらいか、それより低いはずだが、福島の漁業関係者は放出を始めると風評被害で、福島の漁業は壊滅的被害を受ける、と見ている。
これについても、私自身は放出するしか方法はないだろう(選択肢としては、タンクローリーで運んで、東京湾に流す(土地の値段の高く、人口密集地の東京は最終廃棄地には向かず、これくらいしか貢献できないかも・・・)とか瀬戸内海に流す、とかはあるかも知れないが。)と今でも思っているけど、「福島のワインと常磐ものマリアージュ」を目指すとなると・・・とてもじゃないが、外野の私が意見することは出来ず、聞き役に回るしかなかった。
私は「2012福島るるぶ」(事故前の最終版)を持っているが、いわきのハワイアンリゾートから、相馬の馬追いイベントまでの間は何も「観光案内」がない。第一、今でも福島や郡山からきちんとした道路さえなく、客観的に見ても福島県内においてそもそも浜通りは観光開発などしてきたことは全くないに等しい。
それについて水を向けたところ、確かにそれは事実で、原発さえあれば食べていける(ニワトリが先か卵が先かの議論はあるが)ということで、観光開発については何もしてきていなかったのは今からの事業ではハンディである、ときちんと認識していたところも・・・聞き役に回るしかない。同じ復興事業でやっている秋保温泉のワイナリーように、仙台という大都会を背景にしょってるわけてでもないし・・・・。
と言うことで、聞き役としては切なくなってくる。・・・・とりあえずは汚染水の処理方法をどうするのか、しばらくは注目である。