空港のホテル予約カウンターでとったホテルは高かった。
早急に安いホテルを探す必要があった。
チャーチストリートのホテルをのぞいていると、太って愛想のいいインド人が声をかけてきた。
「ホテルを探しているのか。いいホテルに連れて行ってやろう」
その男がリクシャードライバーに何か言っている。
私がリクシャーに乗り込むと、一緒に乗り込んできて、横に座る。
私は、出口をふさがれた格好になった。
「そのホテルが気に入らなければ、別のホテルに行くよ」
「いいよ」
「メーターで行って」
「OK]
リクシャーが走り出すと、隣に座った男が、いろいろ話しかけてくる。
街の説明もする。私は
「ガイドはいらない。金は払わないよ」
と断っておいた。
「金なんていらないよ。ドライバーが英語が話せないから、私が通訳してるんだ」
その男は「ウィリアムだ」と名乗った。
インド人がウィリアム?
名前を尋ねられたので「メアリだ」と答える。
ウィリアムは
「私はクリスチャンだ。カトリックだよ」
欧米人なら、親しみを覚えるのかもしれないけどね。あいにく私は
「仏教徒だよ」
ウィリアムは家族の話をし、6月から学校が始まるので、息子に金がかかる、と言った。
そのうちに、リクシャーが故障して止まった。
ウィリアムとドライバーが、2人であちこちいじっている。
20分くらいしたろうか。
リクシャーが走り始めた。
第一のホテル...。第二のホテル...。第三のホテル...。
どうもピンとこない。インドのホテルってこんなものなのか?
いくつまわったか、わからなくなった。
ウィリアムが
「ここも気に入らないのか。じゃあ、これから、土産物屋に行こう」
「ノー」
「見るだけ」
「ノー」
「5分だけ」
「ノー」
「じゃあ、金を払って、降りてくれ」
降ろされてしまった。
同じ日、私は別のリクシャーに乗った。
若い男がドライバーだった。
メーターで行くと言うので、ホテルに案内してもらった。
第一のホテル...。第二のホテル...。
さあ、次のホテルへ行こう。
ドライバーが言う。
「ガソリンがなくなっちゃったよ。降りて、別のリクシャーに乗ってよ」
降ろされてしまった。
リクシャードライバーとの闘いは続く...