浜通りを走る・・・常磐線踏破記その2

竜田までは外を見ていてもそれほど震災の影響というのは感じられない。除染した汚染土を入れた「黒い袋」もほとんど見ない。竜田にも定刻に到着。バスが2台止まっているのに気付いたがびっくりしたのは降りた乗客の多さである。これだと一台のバスに乗り切れないのでは・・・と二台目のバスに乗ることになった。土日は増車しているとのことで、案外、このルートを走ろうと言う人は多いのかも・・・・

駅前には放射線量計があり、1.0マイクロシーベルト/時間を越えている。バスに乗ると「国道6号線を走りますが、途中、帰還困難地域を通過するので、そこでは窓の開け閉めはご遠慮ください。」というアナウンスがあった。ほぼ一番前に陣取って、これまた定刻に出発である。

国道6号線そのものはそこそこ交通量があるが、ほとんどが業務用の車両で、行楽地に行くような車は(当たり前かも知れないが)見当たらない。最初の停車駅は富岡駅で途中、6号線から外れて駅にアプローチするのだけど、建設作業に従事している人たち以外は、全く人がいない。

ここから浪江まではハリウッドのゾンビ映画みたいな光景が広がる。一見、何事もない街並みに見えるのだけど、人は誰もいない。よく見ると家の中は朽ち果てている。・・・

富岡駅を出発。富岡駅から数分で警備員が立っている帰還困難区域に入る。しかし、あの警備員の人たちも境目にいる、ということは「人が住むことができない」くらいの放射線を常に浴びている訳で、どのように健康管理をしているのだろう。

帰還困難区域の建物は全て時間が止まっている。衝撃的だったのは区域にはいってすぐにあった「しまむら」の路面店で、6年前の商品がそのままハンガーにぶら下がっている。もちろん中は・・・これもまた映画の世界である。有名なチェーン店に入ったら、昔の商品が朽ち果てた状態でぶらさがっている。主人公は舌打ちをして、そのお店を出ていく。・・・しまむらもあんな状況でほったらかしにはしたくないのだろうけど、「区域」に入って解体・廃棄作業をする訳にも行かないのだろう。

枝道は全てバリケードが置いてあり、帰還困難区域をうろうろできないようになっている。外は夏の緑がきれいで、森の木々も全く普通に見える。よくある日本の田舎・・・・ではない。福島第一原発も右手のはるか彼方に見えて、写真を撮ってる人もいたが、とてもそういう気にはなれない。

浪江町との境界で帰還困難区域は終了。十分くらいで次の停車駅の浪江駅前に到着。バスはそのまま原ノ町まで走るのだけど、一時間後に仙台行の電車があるので降りることにした。なお、浪江町は4月1日に避難指示が解除されているが、
http://www.town.namie.fukushima.jp/soshiki/2/namie-factsheet.html

町の多くは帰還困難区域で駅の近くにもホットスポット的に帰還困難区域があったりする。放射線量や被ばくについては(国の理屈上は、ない、はずだが)自己責任でお願いします。・・・

一時間ほどあるので、駅前を少しうろうろすることにした。大きな道路は車がそこそこ走っているものの、住民は全くいない。富岡はまだ復旧作業に携わっていた人がそれなりにいたが、この街にはそれさえもない。本当にゾンビ映画の一コマのようである。町役場まで行けば商店もあるとのことだが、駅からは遠くそこまで行くことはせず。ガソリンスタンドが二軒営業しており、生きている人間の声が聞けるのはそこだけだった。歩道には雑草が茂り、歩くのも大変である。自宅の再建工事をやっている家を二軒見たが、どういう見込みを持ってやっているのだろう。・・・食堂の一軒くらいは営業していないかと期待したが、どのお店も「解体予定」という札が張ってある。この街を本当に復興させようとみんな思っているのだろうか・・・数年後にまた来てみたい。

仙台行きの列車も定刻に来る。ここから先の常磐線沿いの津波被害はかなり大きく、線路も付け替えしている。海側には何もなく、水田が広がっている、と思ったら、よく見ると雑草が生い茂っているだけのところも多い。岩沼を過ぎて東北線と合流。仙台に近づくと、今までの映画の世界からようやく現実に戻ってきた気がした。・・・・

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