すくなくとも車イスに関しては

ドイツの場合、公共施設のバリアフリー工事は、この十年で劇的に進展した。とはいえ、たとえばフランクフルト空港駅のエレベーターなんか、押しても開かないし、呼び出しもダメ。ようするに、予算がついたから工事しただけで、まともに運用されてないところも少なくない。

ところが、その一方、ドイツは、人助けは人間としての絶対義務、という道徳が徹底している。かなりヤバそうな、ゾンビみたいな顔色の、にやけたチューインガム兄ちゃん姉ちゃんたちが、車イスだ、ベビーカーだ、というのを見かけると、瞬時に真顔になって、バスでも、電車でも、飛び出て来て、一致協力して手を貸す。見て見ぬ振りなんてやつは、乗客に一人もいない。これは、どこの街、どこの場面でも、そう。階段なんか、何人もが集まって来て、ささっと上の階まで担ぎ上げてくれる。そして、何事もなかったかのように、また元に戻っていく。「聖霊が舞い降りる」という言い方があるが、まさにそんな感じ。

だから、公共施設以外では、あいかわらず街に段差や階段がやたら多いものの、ドイツは、車イスやベビーカーでも暮らしやすいし、旅もしやすい。

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