ユーレイルパスは、激しい恋のチャンスみたいなものだった、かもしれない。

人が生きていると、ついうっかり、落とし穴に落ちるような、恋をしてしまうことがある。

恋愛とは、理不尽なものだよ。
「こんなことをしてはだめだ!」と理性が告げているのに、
恋に夢中になってしまう。

でも、激しい恋は、実を結ぶことはないものだ。
また、実を結んだところで、その後が大変だ。

その情熱を、一生持ち続けられるような人はいない。
だから、理性は告げる。

「恋はしないほうがいい」とね。

ユーレイルパスは、恋愛のようなものだ。
ヨーロッパ旅行をしながら、いつも旅のことを考える。

次にどこへ行こうかと、考え続けていた。
それは、恋人と次はどこでデートしようかと思うようなもの。

でもどんな愛にも、終わるときがくる。
ユーレイルパスにも有効期間がある。

でも、ユーレイルパスの有効期間が終わったときに、
旅行者は、安堵のため息を漏らす。

これでよかった。
終わらなければ、僕は死んでいたかも…。

人は、一度は激しい恋に落ちる。
旅人は、一度は、ユーレイルパスの魔力にわれを失う。

そうして、歳をとったときに思い出す。

あの激しい恋の一時期が、僕が人生で得たすべてだったのだと。
また、ユーレイルパスに振り回された有効期間が、旅人の絶頂だったのだと。

人は、一度は、盲目的な恋をしなければならないし、
旅人は、ユーレイルパスでわれを忘れるような、旅をしなければならない。

みどりのくつした

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