レポート

「一地両検」と「十年」

公開日 : 2017年08月13日
最終更新 :

もう少しで完成する広深港高鉄(広州-深圳-香港を40~60分程度で結ぶらしい。)の西九龍駅(香港側の終点)で「一地兩檢」(一地両検、一か所で香港と中国の出入国検査を両方やる、の意)で、もめているとのこと。
http://www.info.gov.hk/gia/general/201707/25/P2017072600048.htm

確かに香港域内に人民解放軍が駐留しているにせよ(基本法は外交と国防以外の中国政府の介入は認めていない。)、域内で中国が施政権を持つ、というのは、初めてのことになる。駅の構造がいまいち分からないので、何ともいえないところがあるけど、待合室やホームで中国公安が逮捕権を持つというと、そもそも駅構内が既に中国、になるのはいかがなものか、と外人の私でさえ思うところがある。

ホンナム駅で直通列車に乗る場合も、入国は広州東站だし、深圳湾口岸のように中国領に香港側がイミグレを持っている例はあるけれども・・・・とにかく西九龍站まで連れ込めばあとは中国の勝手・・・というのは、どうもねえ。シンガポールのマレー鉄道のように「鉄道部分が外国」というのは(マレー鉄道廃線跡は多分今でもマレーシア領だと思うけど)当事国にとっては、あんまり気持ちのいい話ではないはず。

で、東京では昨年の香港での一番の話題作「十年」(当然のことながら中国では発禁でDVDも売られていない。)がようやく公開されたので観に行った。(新宿単館というのは中国政府の圧力(?)ではなく、さすがに日本では商業ベースに載らないだろう。)中国と共産党の支配が強まった十年後の香港社会を描いた、ちょっとしたSF映画(?)である。

 気が滅入る(?)映画である。五作のオムニバス映画で、三作目の「方言」はコメディタッチではあるけど、普通語がしゃべれないと空港や駅、港で客が取れなくなる世界になったタクシー運転手の話で、北京語と広東語が少し聞き取れれば、なおのことショッキングな作品。

 さらに五作目の「本地蛋」は当局の言葉狩りによって使えなくなる言葉、禁止される本が増えていく話で、この五作目の一番最後のセリフが、全ての日本人にぐっと来るセリフ(?)で、暗い気持ちで映画館を後にせざるを得なくなるという、そういう意味からも香港ファンには必見の映画である。こういう雰囲気が最近の香港には漂っているのか・・・今年中には一度行ってみたいと思わせる映画であった。

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2件のコメント

  • 『中国化する香港』

    高島さん、こんにちわ

    以前、上記タイトルでレポートしたことがあり、高島さんからも、
    コメントをもらいました。それは当然の傾向であろうと。
    確かにそのとおりなのですけどね。
    中国化は止まらない。もはや既定路線。

    公布文書を読みましたが、要は執法権を持つ内地の飛び地ができるということですね。
    先例としてユーロスターなどの例があると言ってますが、それは同じEU加盟国。
    としたら、こちらはどちらも中国であり、EU以上に問題ではないようにも思います。

    ビジネスに携わる多くの港人はすでにトライリンガルです。
    旅行者にとっての身近な例だと、
    エアポートエクスプレスの連絡バスで、何処までかと聞いてくるけど、
    マンダリンで中文ホテル名を言うとちゃんと理解します。
    路線バスに乗って、運転手に、どこどこに行きたい、着いたら教えて欲しいと
    言ってもちゃんと教えてくれます。
    手機広場など、大陸から大挙やってくるので
    売り手は当然マンダリンで対応しますが、同じ人が大陸人以外には英語で対応しています。
    ホテルで商業施設で、一人の職員が英語とマンダリンどちらでも対応しています。
    小さな食堂ではマンダリンを理解してくれないところもありました。

    私が最も多く乗る航空会社はキャセイパシフィック/ドラゴン航空
    だと思いますが、一人のCAが3つの言語を話します。
    機内アナウンスの順番はけっこういい加減で、英語、広東語、マンダリンの順番はいつも違います。
    そもそも、返還時前後から香港人ビジネスパーソン自らが、マンダリンが話せることが有利になると、
    積極的にマンダリン学校に通うという現象がありました。

    もっと顕著な政治的な中国化の例として、チムサアチョイのフェリー乗り場前で
    ある団体がいつも活動をおこなっているのですが10年頃までは同じところで逆の立場の人がやっていたのです。
    もはや行政の側として中国化は既定路線で、これは止められないでしょう。
    居民側もじわりじわりとその方向へ。

    この夏乗ったキャセイの機内エンターテイメントで、ジャッキーの映画を2作やってました。
    ジャッキーの映画はすっかり変わってしまいました。ここ何年かでジャッキーの映画は明らかに違う。
    あからさまな変わりようです。
    今回、一つはなんと戦前のマンダレー辺りでの抗日モノで、ついにジャッキーもこのような映画を作るようになったのかと、
    しかし、最近のこれまでのジャッキーの一連の作品からすると、何も不可解なことではないという気もします。
    同じ便のもう一つのジャッキーの映画はインドを舞台に、古代の"人類共通"の文化遺産を
    西洋人の略奪から守るというストーリー。
    何と、共演者のインド人役に「一帯一路の意義」を語らせています。
    この2作に限らず、このところの作品を見るとジャッキーはもはや政府の代弁者、代理人ですね。
    作品自体が宣伝物なのです。

    香港は変わっている。そうは言っても、しかし、香港は紛れもなく中国の一部なのです。
    一時期、他者が支配していただけです。
    そこは中国なのです。
    居民等直接の利害関係を持つもの以外の他人があれこれ言ったところで、
    大して意味はないでしょう。

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    Re:『中国化する香港』

    香港一番さん、こんにちは。

    まあ、香港人のことだから、その時々の一番のお客の言葉を覚えるのは当然、のような気もしますが、それでも、マンダリンというのは、ちょっと違う意味を持つような気がします。私も片言のマンダリンは話しますが、香港ではまずは英語で話すようにしています。「でぃすわん」がようやく「にーごー」で通じるようになったので、かたことカントニーズを目指しますよ。香港の中国化、はいいのですけど、香港の共産党支配強化、はちょっとね、というところです。

    そういう意味では、成龍の中国化は目に余る(?)ものがあります。かれは香港人ではないのかって、そう言いたいけれども、香港人の中でも最近の情勢の受け止め方が違うのでしょうね。新宿でも時々カントニーズを聞くことがありますが、やはりほっとします。

  • Re:普通語がしゃべれないと空港や駅、港で客が取れなくなる世界になったタクシー運転手

    普通語(ぷーとんほあ)の「こんじょんしー(工程師)」が文字は同じなのに「こんちょんすー」と発音されることは知っていましたし「にーはお」も「ねいほう」となり、こちらは文字まで違う事も。

    普通語はTVで普通に聞くことができタクシー運転手も聞き取りさえできれば商売が成り立つと思えますが年の取った運転手は大変かも。

    日本だって江戸時代は通訳が必要か筆談でないと意味が通じなかったとか。

    さすけねえは外国でタクシーに乗るときや切符を買うときは印刷物や筆談にするのはそれが「大丈夫な手段」だからです。

    でもスマホのアプリで簡単に変換される時代になって来たので中国語の方言もクリアー出来るのではないでしょうか?

    成功を祈る!

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    広東語、北京語、上海語・・・・

    さすけねえさん、こんにちは。

    カーナビに通りの名前を言う(音声認識。日本ではカーナビで音声認識使っている人ってあまり見ないですけど、当地では普通なんですかね。)シーンがあって、北京語しか認識せず、運転手が広東語なまりの北京語で何度行っても通じず、客が発音してようやくカーナビが認識します。でも北京語の四声はどのように認識するのでしょうね。日本語の方が簡単な気もします。(ハシ等のアクセントをどう認識するかはありますが。)広東語は6声、数え方によっては9声とも言われているので、広東語の方が難しいかも・・・・

    書いたことがあるかも知れませんが、上海語というのは巻き舌音がなく、北京語の発音は上海人にとっても難しい、という話を聞いたことがあります。私が中国語を習った先生(中国人)は語学留学するなら北京でないと絶対ダメ、と言っていて、上海に語学留学するバカさ加減(?)を論じていました。日本語を習う人が関西の大学に留学するのとは、全然違うとのことでした。