蛇足ですが、電気鉄道の電源仕様とパンタグラフについて いささか本題から外れますが。 ユングフラウ鉄道は画期的なほど早くからの電化ですが、それは長いトンネルという制約を克服するためでした。そしてそれ故にいろいろの制約を克服するために当時でもまた今の標準からも外れた仕様で1125V,3相ACです。電源の供給のために水力発電所も建設しました。 現在の欧州の鉄道の電源仕様は、 1.5KV, DC: 南仏、オランダ 3KV, DC: 伊、ベルギー、スペイン 15KV,AC: 独、オーストリー、スイス、スエーデン、ノルウェー 25KV,AC: 英、北仏、デンマーク ここでAC(単相)はいずれも 50/3 Hzすなわち16.6・・Hz. こんな変な数になるのは交流発電機の極数から決まる(100/偶数の極数)からです。なぜこの低い周波数かというと駆動電動機に(今のようにサイリスター制御がない時代に)速度制御が容易な単層整流子電動機を使う上で周波数を下げるのが有利だからです。米国で25Hzの路線がありますが。 最近は前述のサイリスター制御が進んでこれからの計画路線では日本同様に商用電源を使える50Hzか60Hzが見直されるでしょう。仏、スペイン、ベルギーの専用の高速路線では25KV,50Hzが採用されているようです。 ちなみに新幹線は東日本では50Hz,西日本では60Hzでその切り替えはデッドセクションのないうまい工夫がなされていますがここでは省略します。 なおユングフラウ鉄道と同じ3相交流を使った鉄道は他にはコルナーグラート鉄道だけだとおもいます(東欧にあるとも聞きますが)。コルナーグラート鉄道が今もこの方式かどうかは見ておりませんが。なおユングフラウ鉄道の架線は2本で、3本ではありません。 パンタグラフの離線はアークによる架線消耗と事故、騒音などの大きな原因で離線率の減少は大きな課題です。そのために架線の支持法、およびパンタグラフの小型化と部材の減少、パンタ数の減少の努力が続けられています。目で見て分るのは、小型化、菱形からく形への転換、碍子の流体的形状、両側面の遮蔽板の設置と廃止の模索、パンタ数を減らすための連結車へのケーブルでの給電などでしょう。詳しい説明は省略します。 なおスイスの登山電車は低速なのでこのような騒音や離線の心配がないので昔からのまま。 長々と失礼しました。
間違えと訂正のお詫びです 「こんな変な数になるのは交流発電機の極数から決まる(100/偶数の極数)からです」というのは早とちりでした。発電機の場合は一定回転数で極数を増やすと発生する周波数は増えます。 この変な周波数に決まったのは交流整流子電動機の要求から周波数を下げるのに商用電源50Hzの整数分の一にすることをまず決めて、構造の単純な2極発電機の回転数を3000/3=1000rpmに落としたのではないでしょうか。 ドイツでは商用電源とは違った発電所と送電系統が今も使われており、Bahngeneratorという発電機も1000rpmの図体の大きな機械になっています。回転速度をおとしたので材料強度の余裕から大きく作れるので、またそうしないと発電量が減るので。 生半可な知識で電動機と発電機を入れ違えて大恥をかきました。 間違えに気付きながら許容してくださった皆さんごめんなさい。 せめて自分で気が付いたから良かった。 明日ら旅行いたします(今度はスイスでなくイギリスのトレッキング)。 従って充分な対応が出来ないかと思いますがお許しを。
なんとなく・・・ ちょっと変だなあ、とは思ってはおりました。 イギリスのトレッキングはどちらですか? スコットランド? スカイ島など、氷河の跡があって なかなないいですよ。 それとも、湖水地方? そうそう、イギリスは、空気バネのついた気動車が がんばっています。 帰国談、お待ちしています。
便乗質問「どれだけ 丈夫なの? 新幹線のパンタグラフ」 トピ主さんすみません 鉄道ファンの皆様 こんばんわ 便乗質問させて ください トピ主さんすみません 通勤時 新幹線の高架橋近くを通ります、新幹線が走るのを見るのが楽しみです。 パンタグラフ・・・ 以前から気になっていたのですが 高速で走る新幹線のパンタグラフ、走行中磨耗したり 摩擦で壊れたりしないのでしょうか? パンタグラフの1点だけが、電線と接しているなら、摩擦だけでもすごいと思うのですが 火花が出る程度で 壊れないのですから、すごいなぁ とか思ってみています ※考えると パンタグラフもこんなに幅がなくてもいいのでは??とか キリがないのですが ご存知の方 よろしくおねがいします
私は Don't worry. ですが。 トピ主です。 私は、話題がそれていくのは大歓迎です。 ただ、以前、「そんな話しは旅行に関係ない。別の所へ 行ってやれ」 と、了見の狭いレスポンスがついて悲しい 思いをしました。 パンタグラフのよしあしは、経済効果が非常に大きい です。ですので、ものすごい研究が進んでいるはずで す。(私は門外漢) 5年ほどまえ、パリから帰国したとき、帰宅中の 特急が八王子ちかくで架線事故を起こし、3時間 ほど足止めをくらいました。 私の車両の上でスパークが起きて停電し、止まり ました。そのうち、TVの取材までやってきました。
この辺は詳しくありませんが、基本知識として・・・ 架線は定期的に交換しているようですが、基本的にパンタグラフ側が磨耗しやすい設計であると読んだことがあります。 また、架線を真上から見ると1本のワイヤは(何m毎かは知りませんが)レールに対し斜めに張られ、パンタグラフの同じ場所ばかりで給電しないように施されています。 架線やレールの点検は毎日ドクターイエローと言う試験車両が全線チェックしているとか・・・ 昔読んだ本では、例えば下り線路を走りながら上り側の架線を目視で検査する・・・と驚くべき内容でしたが、今はレーザー光線でチェックするようです。 >火花が出る程度で 壊れないのですから、すごいなぁ とか思ってみています ちょっと調べてみると、ある新幹線車両のモーター1個の出力は275kW、4個のモーターを積んだ車両が16両編成には12両のため全体の出力は13,200kWとなります。 この出力を25000Vで賄いますので、効率を無視して計算すると必要な電流は528Aです。 速度のことを無視すれば・・・意外と小さいですね。 記憶では・・在来線で運転台のメータって1000A以上あったような・・・ ただ速度が速いのでステテコ1枚が引っかかったところを走行すると、あっという間に断線・・・となるのでしょうね。
新幹線では のりーたさん、こんばんは これは私からお答えしますね。 新幹線の歴史は、パンタグラフ改良の歴史でもあったのです。 私の先生が国鉄の研究所での委員をしていたため、多少の知識があります。 内蔵介さんのおっしゃるように、架線は硬い金属で作られていて、パンタグラフの架線に接する部分は柔らかい金属で出来ています。それは、架線が削れると、その交換がものすごく大変だからです。すべての給電を停止しなければなりません。それに比べて、パンタグラフの集電部は簡単に交換できる銅板で出来ているので、磨耗したらすぐにそこだけ交換します。上部の溝にはめ込んであるだけですから、車庫ですぐに出来ます。 また、架線は直線ではなく、くの字型に張ってあります。直線で張ると、銅板にすぐに溝が出来てしまいます。くの字に張ってあるために、架線との接触部は右へ左へと満遍なく移動しながら板を擦っていきます。パンタグラフの幅が広いのは、その幅で満遍なく擦るためで、ちゃんと意味があるのです。 それでも、初期の新幹線では一回大阪を往復すると、磨耗がひどくそのたびに交換していたそうです。(私が学生のときのうろ覚えですみません) それからずっと摩擦との戦いの歴史があったようです。 いかに摩擦を減らすか、磨耗を減らすかが延々研究されてきました。摩擦が少ない合金の研究、金属に油をしみこませて滑らせる研究。専門用語では潤滑工学というのですが、長い潤滑の研究の歴史がありました。 その結果、何回も東京・博多間を往復できるようになりました。(もっと正確な話がJRの方から聞けると良いのですが) つまり、架線と擦れる部分はしょっちゅう交換しているので、心配はないのですよ。 これで回答になるかな?
興味深いお話で 4のぶさん、こんばんは パンタグラフの話が、こんなに深い交流電動機の歴史のお話なっていたんですね。 大変興味深く読ませていただきました。 欧州の電車が50/3Hzで動いていることも知りませんでした。 どうも電動機の原理が良く分からないため、かなり難しい話ではありますが。 せいぜい、隈取りコイルとか、コンデンサによる位相制御程度しか分からず、交流電動機の回転数制御にどんな方法があるかも良く分からないのです。コイルの位置を変えるくらいしか知りません。 私にとってはPWMによるパルスモータのほうが、単純で分かりやすいのですが、それはサイリスタ、バリスタ、パワーFETが自在に使える時代だからですよね。 昔のエンジニアのアイデアは、一度まじめに勉強しなおさねばと思わされました。 いろいろ質問もあるのですが、この旅行サイトとは無縁なため、やめておきます。 情報、ありがとうございました。
Re: 興味深いお話で 以下、わたしとまったくおなじ! 同一人物のようです。 >欧州の電車が50/3Hzで動いていることも知りませんでした。 >PWMによるパルスモータのほうが、単純で分かりやすいのです >サイリスタ、バリスタ、パワーFETが自在に使える時代だからです ⇒ 電気自動車への応用で拍車がかかるでしょう。 >いろいろ質問もあるのですが、この旅行サイトとは無縁なため、 やめておきます。 うーーん、これが惜しいところですよね。 スイスパスの 選び方の話しばかりじゃ、飽きるですがねえ。 dankai-engineer.com なんてサイトを作りましょうか。
ぼうふらおじいさんのお許しもありましたので・・・なんて^^ >せいぜい、隈取りコイルとか、コンデンサによる位相制御程度しか分からず、交流電動機の回転数制御にどんな方法があるかも良く分からないのです。コイルの位置を変えるくらいしか知りません。 これ、結構難しいです。 電子回路から入った私も同様でした。 まず交流電動機は整流子電動機と誘導電動機があります。 過去電車で使っていた電動機は4のぶさんのお話では交流でも直流でも使えるユニバーサルモータ(ブラシ、整流子付)だそうです。 このモータ、今でも(インバータ方式ではない)掃除機やミキサーや工具で使われており、直流電動機の特性があるとかで、電圧の制御でも回転数制御が可能となります。 しかし、誘導電動機の速度(回転数)は ・極数 ・駆動周波数 で決まってしまいます。 基本的に電源電圧に依存しません・・・。 で、色々調べると過去の交流の電車や機関車は ・架線から給電された交流を整流し、交直両用モータ、もしくは直流モータを使用する。 と言うのが、基本の様です。 現在の様に誘導電動機を使用する場合は、上記と同様に給電された交流を整流した後、再度VVVFインバータで交流を生み出しモータを制御しています。 なお、隈取コイルは単相誘導電動機に使われる方式です。 >私にとってはPWMによるパルスモータのほうが、単純で分かりやすいのですが、それはサイリスタ、バリスタ、パワーFETが自在に使える時代だからですよね。 はい。 私もモータはパルスモータから入りましたが、あのモータ基本的には同期電動機であり、回路で作った交流で回転させていますので、交流モータの1種と言えます。 と言うか、マブチモータなどの直流モータでも、自身でブラシと整流子で回転磁界(交流)を作っていますので、磁界的にみれば全て交流と言えるのですが、モータ単体に 直流電圧を加えて勝手に回転するモータを直流モータ 交流電圧を加えて勝手に回転するモータを交流モータ と称している・・・そんな感じです。 なおパワー半導体は、今はIG-BTが主力になり、さらにはより高速、低ロス、高耐熱のSiCやGaNなどの素子が実用化されつつあります。 自分の勉強もかねて・・・長々と失礼しました。
なるほど、低周波交流の理由が・・・ 4のぶさんおはようございます。 >こんな変な数になるのは交流発電機の極数から決まる(100/偶数の極数)からです。なぜこの低い周波数かというと駆動電動機に(今のようにサイリスター制御がない時代に)速度制御が容易な単層整流子電動機を使う上で周波数を下げるのが有利だからです。 いわゆるユニバーサルモータを使用していたわけですね。 子供の頃ばらしてあそんだマブチモータ(永久磁石)が基本の様に頭にこびりついていた為、大学で界磁もコイルで作る直巻モータを習ったときは、中々理解できませんでした。 今、回転する理屈を説明しようとすると、先ず昔の教科書を引っ張り出さねばなりません。 情報ありがとうございました。
変換ミスです 単層整流子>>単相整流子
ユングフラウ鉄道のハイテクぶり グリンデルワルトでは、泊まったホテルの主から同鉄道 の歴史等について聞きました。「電車が走ると、村の 電気がなくなる」という村人の心配に対して、「専用の 発電所を作るから心配ない」と答えたそうです。 運行に関しても、仰天したことがあります。2つの編成 が300m程度の距離をおいて同方向に走行するのです。 最高速度が決まっているから、絶対に追突しない、とい う確信があるのでしょうか。それとも、ATSのような 制御装置があるのでしょうか。 とにかく、この様子は、線路わきで見ていると、びっくり です。 それから、ポイント部分で、アプトのギアの、歯の山の 位相がずれたりしないのか、なんて気になりました。 ずれても問題ない? ポイントをしっかり撮影してきまし た。
とても興味深いお話、感激です。 「離線率」なんて、外部の人間は知らないタームですね。 サイリスタチョッパーのない時代の交流給電や交流 電動機の問題、興味深く拝読。なるほど。 私は、日本の特急列車のデッドゾーンでの停電には慣れて います。フランス国内においても、電源の違いがある のですね。でも、ユーロスター、TGV、タリス等、どうやって 切り替えているのでしょう。こいつらは、専用線と在来線、 両方走ります。が、停電した記憶がありませんが。居眠り してた?
細かな指摘になりますがご容赦の程・・ GGA02757さん 昔ちょっとモータにかかわっていましたので、気になる点指摘させていただきます。 >サイリスタチョッパーのない時代の交流給電や交流 チョッパーは直流電動機の速度(電圧)制御方式です。 例えばDC1600Vを短時間で50%オン、50%オフ(チョップする)させると電圧は1/2の800V相当になります。 サイリスタチョッパーは、サイリスタで直流をオンオフさせますので、交流電動機の制御には使用できません。 サイリスタを使って交流のオンオフ時間をゼロボルトからの位相で制御することで直接交流電動機を制御します。 サイリスタはオンさせるのは簡単ですが、オフさせるには交流では簡単ですが、直流ではオフさせる回路が必要になります。 最近700系では、制御素子は大電力を扱えるIGBT(トランジスタの一種)を使ったインバータ回路により交流モータを直流モータ的に制御する方式です。 クドクなりましたが・・・