中年男性は、
「法律に書いてある」
と言って、一枚の紙を見せてきた(英語で書いてある)。
4つの項目があり、1番下の項目に印がついていた。
上3つの項目は、”パスポートの失効”とか、”パスポートの偽造”とか、書いてあった。
1番下には、”ineligible”という英単語が書いてあったが、私は、意味を知らなかった。
私は、カバンから、手帳とボールペンを出して、その英単語を書き写そうとした。
突然、その中年男性は、私から、紙をひったくった。
私は、取り返そうとしたが、男は、カウンターの向こうで立ち上がり、紙を高く上げて、私に、紙を渡すまいとする。
私は、びっくりして、
「シンガポールは、法治国家ではないのか?理由を言え!」
と言った。
中年男性は、
「理由は、法律に書いてある!」
と言い返してきた。
「その法律を見せろ!」
と言うと、
「この紙は、警察官に渡すんであって、お前には、見せられない!」
と言い張る。
「なぜ、法律が見せられないんだ?!」
と聞くと、
「私が決めるんだ!」
と言う。
私は、その英単語を全て書き取りたかったので、なんとかして、その紙を取り返そうとしたが、その男は、二度と、その紙を見せようとしない。
争っていると、警官が来て、何かしゃべった。
私は、急に、無罪放免になった。
パスポートに”30日滞在可”のスタンプが押されて、イミグレーションから出された。
日本のパスポートは、信用が高いと聞いている。
盗まれて、高く売られることもあるそうだ。
私は、旅は長いが、一度も、ビザを失効されたこともないし、不法滞在したこともない。
私のパスポートは、完璧である。
後で調べると、”ineligible”は、”不適格な”という意味だった。
私は、入国拒否なら、その理由を教えてくれと主張しただけである。
どう不適格なのか、説明して欲しかっただけである。
金も十分ある。
服装も申し分ない。
違法な物を持ち込んでもいるわけでもない。
観光ビザで、不法就労しているわけでもない。
犯罪を犯したこともないし、法律違反したこともない。
シンガポールのイミグレーションで、似たような経験をした人はいるだろうか。