私は携帯電話を、普段はほとんど使いません。電源もOFFで、電源を入れるのは1週間に1回くらいです。 だが海外に行ったときだけは昼間は電源をONにしています。
今年は5月下旬から14日間の休暇を取って、私としては2番目に長いヨーロッパ旅行に行きました。 今回の旅行は「親不孝者!」と言われる状況の中、出掛けました。
有料老人ホームに入所している、介護3で痴呆の出ている高齢の母親が、出発の10日前に大腿骨骨折で、緊急入院したのです。そして5日目に、擬似骨を入れる手術を行うことになり、旅行の中止も検討。
しかし行くか行かないかは、経過が安定する手術後3日目(出発2日前)まで待って決める事にしました。 私の立場は、親を見る第一当事者です。
担当医には、手術の経過が良さそうなら、旅行に行きたいと入院の面談の際に話ました。また、国際携帯を持って行くので、必要が生じたら電話を普通どおり090-・・で簡単につながる事を話しました。また、念のため航空券は、帰り便の変更が可能なチケットにしました。 そして、手術後2日目の容態が良かったので、旅行に出発したのです。
旅行は順調に進み僕等夫婦は、バイエルン、ドロミテ、チロルの旅を楽しんでいました。 そして旅行8日目の午前中に、スイス・エンガディン地方をレンタカーでドライブ中に、国際ケータイに電話が掛かって来ました。
「予定通り抜糸も済み、手術後の経過も良いので、明後日に退院してください。」との内容でした。 さっそく老人ホームに連絡して、退院日に引取をお願いし、母親は老人ホームの生活に無事戻ることができました。
帰国してすぐに、老人ホームに見舞いに行った私は、「ヨーロッパに行ってきたよ。」と母親に言うと、「おや、そうだったの?」と、これまでと何一つ変わることの無い、そんな会話に戻りました。
これが、少し親不孝者のレポートです。
こんな状況のとき、人の決断はそれぞれ違います。また、旅行中に「お婆ちゃんの、経過はいいよ!」との連絡が入り、何も心配することなく、旅行を楽しむことが出来たのです。
みんな、家族を持つ頃から、家族や両親や周囲から束縛を受けるし、老いていく親や、歳をとると自分の健康からも制約を受ける。そして収入面や経済的にも。 そう、旅行に行けない理由はどんどん増えてくるのです。
旅行に行ける人は、「幸せ者」なのでしょう。 私の場合は「親不孝者」の烙印と引き換えです。