08/07/09 16:35

Re: ウクライナ(キエフ・リヴォフ)の治安について

 ネオナチ(あるいは自称ネオナチの素行不良グループ)によるヘイト・クライム(人種などを口実にした凶悪暴行事件)は、今年も引続き起きているようです。ネットでも報道が読めますので、neo-nazi, ukraine, kiev...等のワードで検索してみて下さい。外務省の安全情報にも、具体的手口や事例が紹介されたものがかつてありました(失効した情報ですが、今でも読めます)。

 あくまでニュースからの印象に過ぎませんが、ロシア(モスクワやペテルブルグではだいぶ減った気がしますが)や、かつての中欧(隣国スロヴァキアなど)での同種事件と共通するものを感じます。
 例えば、対人暴力の対象はイージー・ターゲットであるアジア・アフリカ系(中近東系やコーカサス系を含む)の無防備な個人が多く、犯人は黒服・スキンヘッドといった典型的なネオナチのスタイルの者が多いです。事案としては、(例えばロワー・クラスの労働者が多い地区や盛り場などで)集団で屯しているときに偶々見つけたターゲットを襲ったり、閉鎖空間である交通機関内で外国系住民を見つけ次第暴行したり、学生寮で留学生を待ち伏せして狙い撃ちするといったケースが挙げられます。

 つまり、旅行者がちゃんとしたホテルに泊りメジャーな観光地を訪れる限りでは、一般にネオナチを目にする確率は(ゼロとは言えないものの、少なくとも在住者よりは)低いと思われます。
 街中で常にガチガチに緊迫したり、周囲の人を徒に敵視したりする必要はないと思われますが、ターゲットになりやすい日本人としては万一に備えた心構えをしておいた方が良いのではないでしょうか。

 旅行先はキエフとリヴォフだけでしょうか。
 キエフやウクライナ東部地域での人種暴行事件がよく報道されますが、リヴォフを含むウクライナ西部で事件が少ないのかどうか、私はよく知りません。この種の事件の性質上、表面化した発生件数と、実際の発生件数との間に隔たりが大きいので、きちんと実態が把握されているのかすら疑問です。地域ごとの経済状態やロシア系住民比率の高さと、事件発生数の多さとの間に相関関係があるのかどうかも、よく分かりません。

 万一運悪くネオナチと遭遇してしまったら、とにかく全力で逃げることです。無法者相手に周囲の人が体を張って守ってくれることは期待できません。警察その他司法機関による追及も不十分(と我々旧西側諸国の人間の判断基準では思える)なので、犯人は目撃者がいるからといって暴行を中止したりはしません。また、往々にして負傷・死亡しても泣き寝入りせざるを得ません。
 警察等に行くことがあれば、その前に日本大使館に相談して協力を要請すべきです。司法手続上のアドバイスや被害者の人権保護という観点から、公館のプレゼンスは大きいためです(現地司法機関で外国語が通じないことも理由の1つですが...)。司法・治安当局の現状に関して、中欧・バルト諸国と旧ソ連各国との間では非常に落差が大きいので、ご留意下さい。

 過度にご心配なさらず、安全で楽しいご旅行を。

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