08/05/01 08:15

原因はひとつではないでしょう

これは旅行業界では随分前から指摘されていたところ。

しかし、ことは単純ではないと思います。
確かに、正規雇用が減れば、「海外旅行?それなら辞めて行ってね。」
になることも多いし、そもそも賃金を低く抑えるための手段なので、
経済的な余裕がなくなる。将来設計もできないので、海外旅行なんか
とんでもない。これは”正論”です。

他にあるのが、携帯電話の普及。まずCDや雑誌が売れない。バブルの頃の、
首都圏の通勤風景。見事に二極化。日経新聞を穴が空くように見ているか、
漫画、劇画に没頭するか。それが今はほとんど携帯電話とにらめっこ。
所謂、携帯貧乏。さらに、「携帯で話ができない」という理由(本当なか?と
思ってしまいますが)で海外に行かないとかも。

それでは旅行をしないのかと言うと、国内は良くするのです。また、ドバイ
が人気であることからわかるように、テーマパーク的なものが好き。さらに
拍車を掛けるのが、円の暴落。日本人は米国にしか目が行っていないので、
米ドルとの比較でしか論じられません。しかし、豪州、英国、欧州などに目を
向ければ、昨年の時点で、10年で二倍近い上昇です。「高い海外」が定着して
しまった。パッケージではなんとか質を落として、価格競争に走っていますが、
やはり内容が悪くなるのは仕方ない。しかも、相手は、金払いの良いアジア
の元気な国やビジネス需要を重視するので、ますます落ちていく。安さに
吊られて行っても、内容に満足できない人も居るはず。

JALパックが一生に一度の憧れだった時代から、今はその気になれば、
海外には国内旅行の感覚で行けます。それだけ、「無理して行かなくても」
という気になるのかも知れません。大衆化は質の低下なので、これは騒いで
いる旅行業界の問題とも言えるでしょう。なんやかんやと行っても、海外
旅行の圧倒的多数はパッケージです。安さだけの疾風怒濤の旅行は、はた
から見ていても、「行く価値あるのかな?」です。

一方で、先日の日経新聞系TVでも取り上げていましたが、10年間で、海外
からの旅行者が二倍になった。これも良く知られているように、日本に
来る旅行者の上位は、韓国、台湾、香港、中国と米国です。最近になって
これまでほとんど来なかった欧州の英国やドイツ、フランス以外からも
客が来るようになった。その一つの特徴としてスペインが挙げられます。
かつて、スペイン人が極東の島国まで旅行に来るなんてことはほとんどな
かった。距離的問題もあるが、やはり貧しいことからだった。今は、経済
的にも豊になったことも大きいが、これに裏返しの日本の凋落。円の価値が
下がっているので、物価が安い。さらに物が豊富で、食べ物も美味しく、
珍しい文化、綺麗な自然、交通の便が良く、都会は最先端で、何処でも治安
は良いというのに加え、番組で取り上げてられていたのが、JTBが企画した
”オタク”ツアーです。中野のアニメ専門店や秋葉原のメイドカフェなどを
巡るツアー。さらに、凋落する旅館を外国人観光客で再生しようと言う試み。
日本人が海外に魅力を感じない原因の一つに、面白さを提案するものがない
ということもあるのでしょう。

韓国や台湾の若者を中心に日本への関心が深まっているのとは反対に、別に
若者に限らず日本人の海外への関心はとても希薄。その都市がどの国にある
のかを知らない大統領が居る国の住民並みかも知れません。関心は精々ガソ
リンの価格程度と言ったら言い過ぎでしょうか。これでは困ると世界史必須
にしても、実際はやらなかったし。

海外に仕事で行かれるかたの中には、米国の政府系や大学の人間が海外に
出にくくなったという声を聞くことが多いのではないかと思います。これ
と同じで、相次ぐ、テロや感染症などで、海外に出るのが恐いという(米国
の場合は手続きが主な原因らしい)心理が働いている可能性もあるでしょう。

経済が先行し、社会の流れは少し遅れて動きます。あたかも気温と海温との
間に二ヶ月程度のラグがあるかのように。例えば、バブル崩壊後に海外旅行
のピークがあり、日本人の若者(特に女性)を中心に海外ブランド買い漁り
現象がありました。今となってはシーラカンス状態。以前は、日本人がほと
んど来ないような場所でも日本人の若い旅行者を見かけましたが、いまや
居るのは中高年のリタイヤ-組。最近でも、某エアラインのビジネスクラス
がほとんど全て中高年パッケージツアーで占められていました。欧州10万円
を切る激安がある一方で、200万円の豪華旅行が数日で完売という時代です。
シンガポールのA380のファーストなどはまさにこの発想。今は多少金のある
世代も、年金すら満足受給できない世代になったときには、どのような海外
旅行になるのか。考えると恐ろしくなりませんか?

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1件のコメント

  • 「ケータイの人間関係から離れたくない」という理由はあると思いますよ。

    >>携帯貧乏。
    >>さらに、「携帯で話ができない」という理由(本当なか?と
    >>思ってしまいますが)で海外に行かないとかも。

    海外に出ても、
    インターネットカフェに入りびたりで、
    日本の友人とメールのやり取りをしている人はいますね。

    友人関係から外れるのが怖い
    というのは、アリだと思いますよ。

    みどりのくつした

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