感染症はダメです 下痢と言っても、急性と慢性とでは、また神経性のものと感染性のものとで は全く異なります。 まず慢性の場合は、下痢止めを使うことはあり得ないので、除外。神経性の ものや水の飲み過ぎは飲んでも構いませんが、元を絶てば直ります。問題は 細菌(一部ウィスルによるものもある)感染です。赤痢や出血性大腸菌など は腸の上皮細胞に進入しこれを破壊するので、失血がひどい。一方コレラは、 毒素が入ることにより、細胞の塩と水の吸収・排出バランスが壊れ、大量の 塩と水分が体外(腸管)に出ます。これが激しい下痢の実態です。まず、体 内の菌を死滅させること。これには抗生物質が有効です。体内から菌と毒素 を出すことと失った塩分と水分を補えば、コレラは怖くありません。当然、 下痢止めで抑えてはいけません。下痢も一種の応答反応です。風邪やインフ ルエンザで咳をしたりくしゃみをすること、鼻水を出すこと、熱を出すこと はは、体内から異物を出し、それ以上の進入を抑え、これらを殺そうとして する生体防御反応です。ただ、咳がひどくて眠れない、呼吸が苦しい、高熱 が続き苦しい、脳が損傷を受ける可能性などがあれば、度を超したときに対 処療法として、薬の投与があります。当然、この判断は医師がなすべきこと です。ですから、明らかな食べ過ぎ飲み過ぎ、ストレス以外では、下痢止め を服用すべきでないのです。下痢止めに限らず、市販の薬に頼り過ぎるのは、その地域の状況が分からないだけに危険と言わざるを得ません。 コレラなどは胃の酸で普通は死滅しますが、水の取りすぎとか体力が弱って いる場合などは、腸まで達し、そこで増殖します。健康な人なら、少しくら いの菌を取り込んでも大丈夫なのはこれが理由です。10年ほど前にインドネシアに観光に行った日本人団体が多くコレラに罹り、バリ観光が大打撃を受 けました。高齢者や胃の弱いかたが中心で、日本人以外には出ませんでした。刺身というとまず腸炎ビブリオですが、生ものを好む日本の食生活が、熱帯 地方で通用するかよく考えるべき事例だったと思います。 正露丸(征露丸)は抗生物質ではありません。抗菌剤と言ったほうが妥当で しょうか。クレゾール、フェノール類ですから消毒薬みたいなものです。殺 菌作用はありますが、細菌が破壊した組織に対するダメージも相当なもので(薬=毒の典型)、「あっ、やばい物を食べてしまった」というときや、消 化器系組織を破壊しない細菌感染には有効ですが、逆に症状を悪化させるこ ともあるので、使い方を間違えると命取りにも繋がりかねません。消毒液を 服用するようなものですから。薬に対する正しい教育は日本では全くと良い ほど行われていません。専門知識を持った人からしか購入できないはずですが、実際はそうではないのが現状です。 まず、危険な物には手を出さない。衛生的な店で食事をする。手洗いをしっ かり。地元の人間には何でもないのに、旅行者には害を与える食べ物も多く あります。情報把握と健康管理をしっかりしましょう。