ジオキシンは間違い

恐らく、誰かが間違って書いたものが拡散しているのでしょう。

医学専門誌であるLANCET (www.thelancet.com)では、2-Chlorobenzalmalononitrile
Use of tear gas for crowd control in Hong Kong
Published:October 14, 2019
The tear gas used by the police contains o-chlorobenzylidene malononitrile, an irritant that interacts with mucocutaneous sensory nerve receptors, including TRPA1 channels, and causes rapid clinical effects with a wide margin between the incapacitating dose and the lethal dose.2
Although brief in duration, clinical manifestations include tearing and burning sensations in the eyes, cough, dyspnoea, skin rashes, blistering, hypertension, nausea, vomiting, and agitation.

CSガスとも言われ、発明者のBen Corson and Roger Stoughtonの名にちなんでいます。

恐らく、発信元は、
www.reddit.com
The tear gas used by the HK police has Dioxin in it. Dioxin is a known human carcinogen.
www.dimsumdaily.hk
Police confirm tear gas rounds fired may contain dioxin, a highly toxic component that can stay in human body for over 35 years
17th November 2019 – (Hong Kong) Hong Kong Police confirmed that the tear gas rounds they fire may contain dioxin. CS, the key component of tear gas produces Dioxin-like substance under high temperature.

確かに、Tear GasにはCRガスと言われるDibenzoxazepineがあり、かつて英国で使われていたものがあります。死亡事故などがあったため、今は日本警察も使っているChloroacetophenone（CNガス）になっているようです。Dibenzoxazepine→Dibenzodioxin→Dioxin→ダイオキシン＝ジオキシンになって、これが一人歩きしています。本当はCSガスなのに、CRガスとの区別ができず、さらに、一部が似ているだけのダイオキシンと思い込んでしまった。塩素は確かにあるが、付いている場所が違うので、全くの別物です。この手の間違いはよくあり得るのですが、出どころや情報源をきちんと辿ればこのような広がりは起きません。伝聞を鵜呑みにして検証しないで拡散させるとこうなるのです。デマとまでは言いませんが、無責任なことです。

でも決して、香港警察のやり方を擁護するつもりはありません。大学は中継点HKIXが置かれていて、香港情報発信の拠点でもあります。何よりも学問の自由が破壊されたのは残念。でもなぜ、こうなるまで香港市民は何もしなかったのか。一国二制度は有名無実化していたり、反大陸を主張する人たちが囚われたり、選挙で民主派が立候補すらできない状況にも黙っていたとしか思われない。ここまで来て、力と力との対決では勝ち目はなく、悲惨な結果に突き進んでいるような、まさに玉砕態勢です。