レポート

スリ かっぱらい

公開日 : 2005年07月23日
最終更新 :

スリ・かっぱらいなどどこの国にだっている。 もちろん日本にもいる。
しかし、その現場に出くわす、もしくは被害者になるということは日本にいたらそうは無いだろう。
僕はあちこちで現場を目撃したし、スリに遭いそうになったこともあったが、その中でも忘れられないのはイタリアからギリシャへの船の中での出来事だ。
この船は一晩でギリシャに到着する。 僕は一番安い3等室のチケットを買い、船に乗り込んだ。
3等といっても日本のような畳の大部屋で毛布や枕が置いてあるわけでもなく、駅のホームにあるような硬いイスがズラっと並んでいるだけだ。
30分も座ればお尻が痛くなってしまうようなイスで一晩過ごせというのだ。
素直にそれに従ってイスに座り耐えている人など一人もいない。
マットも敷いていない固い床に、みんなそれぞれ自分の陣地を荷物で主張し、その中で眠っている。
そんな3等室だったが、船内の雑用をこなすイタリア人従業員のお兄さんは終始笑顔で客と接してくれ、そのおかげで船内の雰囲気は悪くなかった。

夜になると、海も見えないしもう眠るだけだ。
僕は少し船酔いしたみたいで、ぐっすりと眠ることができず何度も目が醒めた。
夜の3時頃…。 僕の10メートルほど先で眠っているアメリカ人旅行者の真上の電灯だけがチカチカと点いたり消えたりを繰り返していた。
なんだろう?とまわりを見回すと、あの陽気なイタリア人従業員が電灯のスイッチパネルをいじっている。
故障を直してるのかな?と思い、そのまま横になっていたが、しばらくするとそのイタリア人従業員がみんなの寝ている隙間をぬってこちらへやって来る。
見回りにしてはおかしい…。 それに、暗いから気がつかなかったが、よく見ると制服を着ていないではないか。
先ほど電灯をチカチカさせていたアメリカ人旅行者の前でイタリア人従業員は立ち止まった。
まさか!?と思ったその瞬間、彼はアメリカ人の荷物に手を突っ込んだのだ。
僕は瞬間的に「ラドロン!(どろぼう!)」叫んだ。 イタリア語が全くわからないからとっさにスペイン語が出た。
イタリア人従業員はびっくりして早歩きでデッキの方へと逃げて行き、アメリカ人旅行者はなにも盗まれずに済んだのだ。

翌朝、そのイタリア人従業員を探したが姿は見えなかった。
従業員だったら働かなければ仲間にばれてしまうだろう…と思っていたが、よく考えてみるとそうではない。
彼は最初から従業員などではなかったのだ。 船の従業員らしく見える服を着て、雑用係のフリをしていたのだ。
そして夜になってその服を脱ぎ、昼間から目をつけていたアメリカ人旅行者が完全に眠っているのを電灯をチカチカさせて確認し、貴重品を盗もうとしていたのだ。
これは僕の推測だが、きっと間違いないであろう。

さすがイタリア!である。
続き http://www.geocities.jp/dentane1/hoshino/backpacking/open.html

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