12) そば粉のクレープ (その3 ディナンにて) d)ディナンにて モンサンミシェルに泊まった明くる朝 Dinan(ディナン)へ行った。 ディナンはブルターニュの東の中心都市Rennes(レンヌ)の北西に位置する小さな町である。 小さいといっても、駅から旧市街までは徒歩で20分程度かかる。 旧市街を囲っていた城壁が全周の3分の1程度残っている。旧市街の雰囲気はいい。 観光案内所でクレープについて尋ねると、ここではそば粉のクレープはガレットというと説明された。 街を歩くと、クレープ屋をよく見かける。 店の前のメニュー表示では、ガレットとクレープ(甘いもの系)を使い分けている。 時間があまりなかったので、観光はそこそこにして、小さなクレープ屋に入る。 時刻は11時20分頃で、まだ客はいない。 店先で、12時半の列車に乗るので、昼までにはまだ早いが、そば粉のクレープ(ガレット)がそれまでに出来るか尋ねた。 女将さんは、まだ昼前なのでクレープ(ガレット)の鉄板に火を入れていないが、火を付ければそんなに時間はかからない、列車の時間までには食べられる、と言うので、具を選んで注文する。 シードルを頼んで、ちょっとずつ飲みながら待つ。 日本人かと尋ねるので、そうだと答えると、フクシマはその後どうなっているのか、とか、フランスのどのあたりを旅行したのか、とか、話をしながら待つ。 日本人でこの町に来る人は、モンサンミシェルからの帰りの人がほとんどだという。 (それは、おそらくそうでしょうね。) 程なくガレットが焼けた。 西のカンペール地方とは違い、確かにちょっと厚く、生地は柔らかく焼いてある。 四方を全部折り曲げて、曲げた方を下にして出す。 (すなわち、封筒でいうと、宛名を書く方が上になっている。) 具を変えてもう一枚食べたくなった。 もう一枚注文するが、時間がなくなりそうなので、12時半の列車に間に合うように、タクシーを呼んで欲しいといったら、12時15分に迎えに来るようにタクシーを予約してくれた。 シードルも追加注文する。 私が「カンペールの近くでもそば粉のクレープを食べたが、ちょっと薄くてここのとは違っていた。」と言うと、 女将さんは、 「あちらのはそば粉と小麦粉を半々に混ぜて使っているのよ。だから薄く焼けるの。こちらの方は蕎麦粉だけを使っているから、絶対こっちの方がおいしいわ。」という。 (自分の土地のものの方が他方のものよりおいしいと言いたくなる気持ちはわかる。 でも、そば粉のクレープについていえば、どちらがおいしいかと言っても、正直、優劣は付けがたいと思う。) 食べ終えたので、お代を払う際に、タクシーを呼んでもらったお礼として1ユーロコインを出したが、女将さんは「Ce n’est pas bon. (それは良くない)タクシーを呼んだだけでお金を受け取るわけにはいかない。」と言ってどうしても受け取ろうとはしなかった。 なかなか気骨ある肝っ玉母さん女将だった。